ASD:Autistic Spectrum Disorders:自閉スペクトラム症
HSP:Highly Sensitive Person:非常に敏感な人
HSPは医学用語ではなく心理学用語。
ではASDや精神疾患などにみられる感覚過敏と
HSPでは何が違うのか。
ずーーーっと疑問だったのですが
こちらに回答がありました。
より一部抜粋
📌心理学起源からかけ離れたHSP理解
HSPとはHighly Sensitive Person、つまり「とても敏感な人」の意味です。
日本では「繊細さん」と呼ばれることも多いですが、繊細で生きづらさを抱えた人、社会の刺激に過度に影響を受けてしまう生きづらく大変な人、という意味のラベルで、世の中一般では使われています。
ですが、HSPのルーツである心理学では異なります。HSPが立脚するのは人間の「感覚処理感受性」「環境感受性」という心理的特性です。人は環境から影響を受ける存在なのですが、刺激に対する影響の受けやすさの違い(知覚や処理の個人差)があります。この「感受性」が相対的に高い人が「HSP」とされます。
📌不正確な情報の増殖とブーム
HSPの提唱者であるエレイン・アーロン氏の著書The Highly Sensitive Person (1996)の翻訳書をもとに、様々な人が独自の解釈や経験に基づいて付け足したり、薄めたりするような発信が増えていきました。さらには、一部の医師もHSPブームに参入していきます。こうしたおかしな情報の広がりは、2019年頃には無視できないほどになっていました。
📌専門性の怪しい「HSP専門カウンセラー」
こうした方たちの発信の多くは学術的な根拠に基づくものではありません。専門性の不確かな「HSP専門カウンセラー」と称する方がカウンセリングを行ったり、あるいはそうした専門カウンセラーを養成するという高額のセミナーが開かれたりしているのです。
📌HSPを「治療」すると謳うクリニック
また医療面でも「HSP外来」といった専門外来がつくられ、「HSPを治療する」と謳う一部のクリニックが存在します。HSPは心理学に基づく概念であって、発達障害や精神疾患のような診断のための概念ではありません。だから「HSPだ」と診断したり、治療したりするというのはおかしな話なのです。TMS治療、あるいはHSPの脳波診断は、一見有効そうに見えるかもしれませんが、根拠はありません。精神科医にとっては、気質としてのHSP(感覚処理感受性)は専門外の領域で、診断対象ではありません。こうしたHSPに参入するクリニックでは、学術的な専門性が高くない医師が、経験や精神医学的な知識をもとに語っているようにみえます。こうした情報の正否は心理学の研究者からみたらすぐわかりますが、一般の方が見極めるのは難しいでしょう。そういう人たちをHSPの識者として取り上げてしまうメディアの側の責任が大きいと思います。
📌マルチ商法・カルト団体の参入
ブーム下では、HSPは「生きづらさ」を示すラベルとして用いられており、そしてそれに共感を覚える人たちが多く集まり、自らもそう自認するようになっていきました。そうした「生きづらさ」を抱える人々は、マルチ商法やカルト団体の格好のターゲットです。HSPは生きづらさと同時に「繊細さは才能」、「障害」ではなく「気質や性格」という位置付けで、かつ「生きづらいあなたの才能に気づかせる」というメッセージの出し方は、信仰と親和性が高く、こうしたことから、カルト団体の勧誘の対象になりやすかったのではないかと思います。
📌医療や支援とのつながりを失う危険性
自分をHSPと自認する方をいくつかタイプ分けすると、その中にはHSPというラベルに傾倒し、アイデンティティの中核にしている方もいます。それぞれの背景があるのだと思いますが、気になることは、生きづらさや繊細さを「特権性」として扱っている、つまり「HSPは他の人とは違う。本当は繊細な、素晴らしい能力をもつ存在なのだ」と主張している場合があることです。中には、HSPでない方を蔑むような考えや発信をしている人もいます。こうした問題は本書で掘り下げているのですが、区別というより差別的な側面があると言えます。
そしてもう一つ問題なのが、自分をHSPと自己理解することによって医療につながることができなくなっている人たちです。本当は医療的アプローチによって、発達障害や精神疾患への適切な支援や治療につながることができるかもしれないのです。ところがHSPという自認のラベルゆえに「これは障害や病気ではなく気質なんだ」という自己理解につながり、医療へアクセスできなくなってしまう。当人の自己理解の場合も問題ですが、お子さんの場合も深刻で「わが子は障害でなくHSC(子どものHSP)という気質だ、だから検査や支援は必要ない」となってしまうと、その子のニーズを見誤り、適切な支援につながらないという危険もあるのです。
📌発達障害や不安障害とどう違う?
発達障害(神経発達症)になじみのある方や一定の知識のある方にとって、HSPは胡散臭く感じられることがあるようです。というのは、ASDなどの発達障害(神経発達症)、あるいは不安障害などの精神疾患などにも感受性に関する特性があります。いずれも広い意味では感受性を扱っているので、似通って見えてしまう方もいるようです。そしてポップ心理学的なHSP理解では、これらの区分がなされないままです。ですから、情報を受け取る側も混乱したり、警戒したりするのも無理はありません。これが問題をややこしくしているのです。
「環境からの影響の受けやすさ」から感受性を扱う発達心理学に対して、発達障害(神経発達症)における感覚過敏や感覚鈍麻は「脳機能の偏りから生じる感覚特性」として、発達障害(神経発達症)に特有の文脈で捉えられているように見えます。
📌学校教育に入り込むHSC
ポップ心理学的なエビデンスのないHSP(HSC)の考え方が教育現場にも浸透しつつあります。こうした理解に基づいて「この子はHSC」とラベルを貼ったり、先生がそう考えたりするのは問題です。HSCは学校で良くも悪くも影響を受けやすいということになりますから、むしろよい関わりがあれば、学校に適応しやすくもなります。決して弱い、学校になじめない子ではないのです。
📌見て見ぬふりができなくなった
「自己肯定感」「アドラー心理学」「アダルトチルドレン」など、学術的な裏付けのないポップ心理学の言葉はこれまでも広がっています。ですから、いまさら自分がなにか言うことはないだろう、と考えていたのです。ところが、次第に「HSPの人は魂のレベルが高い」など、怪しい情報が目につくようになってきます。また「電話が苦手だとHSP」「コーヒーが飲めないとHSP」「人付き合いが苦手だとHSP」など、いわゆる「あるある」ネタがSNSで飛び交うようになっていきます。こうした不正確な情報に人々が惑わされはじめ、それに伴い「HSP専門カウンセラー」を称する方や、HSPを診断・治療すると謳うクリニックが出てきます。あるとき「HSPは漢方で良くなる」という言説を目にし、それを批判したところ、大きな反論が飛んできました。このころに、ブームの問題が一線を超えた、社会的な実害が目に余るほど出てきた、と思いました。
自分の大切にしている研究領域が社会に悪い影響を与えたことが、汚されているようで悲しく感じましたし、「もっと適切な研究や考えがあることを知ってもらいたい」とも思いました。それで、見て見ぬふりができなくなったのです。
📌チーム・機関で研究情報の発信を
HSPにかぎらず、心理学には学術的な根拠や再現性に疑念のあるターム(専門用語)が多く、一般に広がることがあります。たとえば、物事や相手に何度も接触することで印象が良くなるという「単純接触効果」、相手に期待することでパフォーマンスが上がるという「ピグマリオン効果」などは、現在は再現性が疑問視されています。そうしたことに、現在の学術的な根拠に基づいて研究者が情報発信することは意義が大きいですし、それをチームなり、あるいは学術機関としてできるといいのではないかと思っています。
【感想】
HSPという言葉への違和感は
これで説明がつきました。
しかし「ピグマリオン効果」も
疑問視されているとは知りませんでした。
何事も鵜呑みはだめですね。勉強します。
【注】「発達障害」は「神経発達症」と呼称変更されています。